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韓国棋院現総裁
韓国囲碁界を救った"海運王"、150億ウォンを寄付した男
2026 年 08 月 02 日掲載


韓国囲碁界が深刻な資金不足に直面し、世界大会の存続さえ危ぶまれていた時期がありました。そんな危機的な状況で、意外な人物が韓国囲碁界を支える存在となります。その人物は、トップ棋士でも、政治家でもありません。世界の海運業界で巨大な影響力を持つ実業家、郑泰淳(チョン・テスン)氏です。

日本では「チョン・テスン」「チョン・テホン」など複数の表記がありますが、韓国最大級の海運会社・長錦商船(SINOKOR MERCHANT MARINE)の会長として知られています。

惜しみなく囲碁界へ資金を投じることから、韓国棋士たちの間では「自ら食糧を持参するスーパー支援者」とまで呼ばれています。

普段、私たちは中韓トップ棋士による熱戦に注目しがちですが、その舞台裏では、囲碁界を支える企業や経営者たちの存在が欠かせません。

今回は、韓国囲碁界を陰で支える郑泰淳氏についてご紹介します。

韓国囲碁界を支えた"圧倒的な資金力"

2025年9月23日、韓国棋院の理事会でチョン・テスン氏は理事長に選出されました。

しかし、正式に理事長へ就任する以前から、韓国囲碁界への貢献はすでに始まっていました。

2024年12月、副総裁だったチョン氏は、なんと130億ウォンを一括寄付しました。

この資金によって韓国棋院は、新たな建物の残金を完済、本館の向かい側に位置するこの建物は現在、「韓国棋院新館」として、多くの囲碁大会の会場となっています。

もちろん、チョン氏の支援はこれだけではありません。韓国囲碁リーグは、一時、メインスポンサーだったKB国民銀行の撤退により、開催そのものが危ぶまれていました。その際もチョン氏が各方面と調整を行い、新たなスポンサーとしてハナ銀行の協賛を実現。リーグ存続に大きく貢献したと伝えられています。

さらに、韓国には賞金額の高い世界大会が少ないという課題もありました。そこでチョン氏は、新韓銀行と毎日経済グループを結び付け、新たな国際棋戦「新韓銀行世界棋仙戦」の創設を後押しします。優勝賞金は4億ウォン。

韓国開催の世界大会としては過去最高額となり、大きな話題を呼びました。

LG杯復活の立役者だったのか

韓国メディア「KUKINEWS」のイ・ヨンジェ記者は2026年2月、韓国棋院関係者の話として「LG杯は中止になる」と報じました。

ところが、そのわずか2か月後、韓国棋院の年間スケジュールには、LG杯国内予選の日程が掲載されていたのです。報道では、韓国棋院の職員でさえ「なぜ復活したのか分からない」と話していたと紹介されています。

そして囲碁界では、「チョン会長がLGグループを説得したのではないか」という見方が広く語られるようになりました。

もちろん正式な発表はありませんが、それほどまでにチョン氏への期待と信頼が大きいことを物語るエピソードと言えるでしょう。

理事長就任から1年足らずで、チョン氏が韓国囲碁界へ寄付した金額は150億ウォンを超えたとされています。

これは韓国政府が韓国棋院へ毎年支援している予算のおよそ8倍にも相当します。

海運王としてのもう一つの顔

では、なぜこれほどの支援ができるのでしょうか。その理由は、チョン氏が韓国海運業界を代表する実業家だからです。

1989年に長錦商船の設立へ参加し、アジア通貨危機を乗り越えながら会社を成長させました。2025年には資産総額127億ドルを誇る韓国有数の企業グループへと発展しています。

さらに2025年末には、息子のチョン・ガヒョン氏が思い切った決断を下します。超大型原油タンカー、いわゆるVLCCを大量に購入・長期チャーターしたのです。当時は大胆すぎる投資とも言われました。

しかし、その数か月後、中東情勢が緊迫し、ホルムズ海峡を巡る情勢悪化によって原油輸送需要が急拡大。VLCCの運賃は歴史的な高騰を記録しました。

長錦商船は事前に大量の船舶を確保していたため、大きな利益を得ることになります。韓国海運専門紙によると、長錦商船のVLCC保有規模は世界12位から一気に世界トップ3クラスへ躍進したと報じられています。

現在は、チョン・テスン氏が海運業界団体や韓国囲碁界に注力し、会社の日常経営は息子が担っています。

父の理念と、息子の大胆な経営判断。この二人三脚が、現在の長錦商船を支えていると言えるでしょう。